マラ7攻略日記(水響 ホルン編) 第8回 (1999/8/7)

名器登場!

8/7(日)  9回目の練習日

 早いものでもう8月、演奏会まで3ヵ月を切ってしまった。
 今日の練習はまた1楽章、しかも1楽章オンリーである。今までの練習の出来からすると、第1楽章は良いときと悪いときとの差が激しいため、他の楽章に比べて合奏のしがいがあるということであろう。2,4楽章など個人の技にかかっているところが多いとはいえ、ヤバさ的には1楽章の比ではないとも思うのだが・・・

 さて、前回の日記の予告どおり、今回は最近手に入れた新しいメルヒオールを持って練習に臨んだ。今度の楽器はドイツの某超一流オーケストラのホルン奏者が最近まで実際に使用していた楽器であるせいか、違うメーカーの楽器かと思うほど軽い吹奏感である。


【第1楽章】

●史上最遅!
 今日の1楽章の練習はたっぷり2時間もあるからであろうか、テンポが信じられないくらい遅い。これまでチェリビダッケ並みと言っていたが、とてもそんなレベルではない。おそらく人類史上最遅のマラ7と言えそうだ。
 さすがにこのテンポが利いているせいか、一部の金管ソロの音程が上ずりがちである(速い部分でも上ずってるような気もするが・・・)。症状からすると、音程が上ずるのはどうも息が入っていないのが原因のようだ。
 ブレスコントロールについては、第2回の日記に詳しく書いてあるので、是非参考にして欲しい。

●やっぱりアルトトロンボ−ンが・・・
 パイパーズの215号にも掲載されていたが、1楽章のコラールのトロンボーンはアルトに持ち替えるように指定されている。一瞬の出来事だし、それほど高い音域でもないので、通常は持ち替えなしに吹いてしまうようである。
 しかし、マーラーの意図は音が高くて出ない可能性を低減させるところにあるのではなく、音色を変化させるところにあるのだ。
 超一流のプロ奏者ともなると、音色を自在に操れる場合もあろうが、マーラーを得意としている水響としては、やはりアルトトロンボーンを使ってマニアック度をアップして欲しいものだ。
 ついでに言うと、5楽章の415小節目のトランペットも本物のF管で吹くように指定されているので、これも実現させればマーラー大好きオケとしての面目躍如となること請け合いである。

●指揮者ついにキレる?
 ついに恐れていた事態が発生。滅多なことでは合奏中に怒らない指揮者のS氏がついにカミナリを落とした。
 懸命な読者の皆さんは、これまでの日記を読んでS氏が何故怒ったのかすぐに察しがついたことと思う。すでに過去何回も書いたように、毎回リズムが全く合わない。何度言ってもリズムが合わないのでは怒るのも当然であろう。
 さすがに怒られた瞬間は静まりかえったが、次回の練習は合宿であり、練習前夜の飲み会ではじけてしまい、皆忘れてしまうに違いない。多分また同じ注意を受けるに違いない。指揮者と団員とのガマン比べといったところか・・・
 それにしても一回言われたら書き込みでもしておけば間違いないのにと思うと、情けない限りである。

言われたことは楽譜にきちんとメモりましょう!

●名器快調(開帳ではない)
 日本全国のメルヒオールマニアの皆様、お待たせしました...という訳で、今回は新たに入手したメルヒオールで合奏に臨んだ。
 これがまた快調!! 前回までの不調がウソのようである。さすがにドイツの某超一流オケの3rd奏者が最近まで使っていただけのことはある。フルダブルなのにBbシングルのような(とはいってもヤマハとかメーニッヒとかリコキューンとかではなくメルヒオールのBbシングル)軽さで音もバンバン当たる。音程もしっかりしており申し分ない。唯一難点を言えば、今持っているミュートと相性が悪いので、ミュートの音程が非常に取りづらいところくらいであろうか。


練習後の感想

●黄色は良い
 以前ベルリン・フィルのシュテファン・ドールという主席ホルン奏者が雑誌のインタビューで話していたが、彼はベルリン・フィル入団前は赤のアレキサンダーの110を使用していたのだが、入団後は黄色の楽器を使用することにした。これは、赤は音がダークであったためにオーケストラに埋もれがちになるが、黄色はオープンな音色のため赤より音が通るからだそうである。
 色は楽器に使用されている金属の混ぜ具合により変化するが、音色への影響はいろいろな要因があるので楽器によって様々であり、一概に赤の音が通らずに黄色が通るとは言えない。しかし、私の持っている4台のメルヒオールに関して言えば、彼の言うように赤は音が溶けやすく、黄色の方が浮く傾向にある。
 今日の練習でも、楽に吹いても音が結構通るので今までのように吹き散らかさなくても済んだところがあり、これが調子が良くなる原因だと思う。やっぱり黄色は良いね!


今日のワンポイントレッスン

※リズム感の共有(2)〜アンサンブル編

 さて、前回の日記は「下準備編」ということで、
  (1)通常程度の記憶力
  (2)通常程度の心臓の強さ
  (3)緊張感と基本動作
の3点が重要であることを説明した。これらは個人個人のレベルで解決できるものである。今回はこれら個人のスキルを身に付けたあとに、どうやって他の演奏者と合わせて行けばよいかを解説する。

◆注意力を高めるために気をつける3つの要因
 要するに注意力が足りないという点が、最も大きい問題点である。そして、注意力を高めるためのヒントは、何と日光東照宮にあることが判明した。
 徳川家康が祭られていることでも有名な日光東照宮には、これまた有名なシリーズ彫刻「猿八態」のうちの1つである三猿(=「見ざる、言わざる、聞かざる」)がある。これは人間の行動を皮肉っている彫刻であると言われている。

(1)見ざる
 他の人が懸命にザッツを出してたり、場合によっては指揮者が合図を出してたりするのだが、見ていない人というのは多いものである(大抵の場合楽譜に釘付けになっているようだ)。ちょっと周りを見まわしてみれば、どんなリズムで吹けば良いか分かることは多い。
(2)言わざる
 これは、いい加減なリズムで吹いてしまうことで、リズム感を共有しようと思っている他の奏者を巻き込んで演奏をボロボロにしてしまうといったところだろうか。もっと上級者になると、他の演奏者を自分のテンポに合わせさせるオーラが出るような演奏ができるようになる。これくらいにはなりたいものだ。
(3)聞かざる
 人の演奏を聞いていないこと、そのままである。演奏中や吹く前の息遣いを聞いていると、自然とリズムは合うようになるはずである。

 ここまで書いてみると、三猿の彫刻は自己中テンポが得意の水響団員を皮肉っているのではないかと思ってしまう。水響の皆さん、「見ろ、言え、聞け」!ってなところだろうか。

◆効果的な練習法
 リズム感を共有できるようにアンサンブル力を高めるためには、やっぱり練習あるのみである。まずは「見ざる、聞かざる」の対策、そしてこの2つができるようになったら「言わざる」対策である。
 私が高校のころに所属していた吹奏楽部では、リズム、音程、フレージングといったアンサンブルの精度を高めるために、パート練習、全体合奏において次のような練習を行った。

(1)パート練習
 これは、曲についてのパート練習のほかに、普段から基礎練習・アンサンブルなどを一緒に行うことで、リズム感・音程感の融合を図った(ホルンは専用の小部屋を用意してもらった)。ここまでは、大体の人が経験はあるかと思うが、そのほかにおもしろい練習として反射神経を養う練習がある。プリンシパル奏者を1人決めて、その他の奏者がプリンシパル奏者が勝手に吹くメロディに瞬時に合わせるという練習である。
 「フレールジャック」とかの馴染み深いメロディの変奏曲をプリンシパル奏者が即興で演奏し、もう1人がベートーヴェン風にハーモニーを付けて行くというものを練習したのを覚えている。突然リズムを変えたりとか短調にしたりというようにプリンシパル奏者が変奏していくのだが(実はこれもかなり大変)、それに瞬時に合わせるというのはかなり神経を使う。こういった練習を日々行っていると、いやでも他の人の演奏を聞くように刷り込まれることとなる。
(2)全体合奏
 全体合奏では、指揮者なしで練習することが良くあった。全員が輪になってリズム感や音程、フレージングなどを融和させていくためのものであった。指揮者がいるときは、指揮者とそれぞれの奏者が一方通行になってしまうことがよくある。指揮者なしで周りを見渡しながら演奏することで、いやでも他人の音を良く聞き、自ら他人にザッツを出したりすることになる。この練習をやった後には、アンサンブルの出来がみちがえるほど良くなったことを記憶している。
 私のいた高校の吹奏楽部は現代曲を取り上げることが多かったのだが、今考えると指揮者なしでよく合奏できたものである。

 以上が私のかつての練習方法である。あまりにも基礎的なことばかり書いているので肩すかしをくらったと思った人もいるだろうが、実際にこれが出来ていないのが現実である。そしてこれらの点をカラダに覚え込ませることが重要なのだ


次回はいよいよ合宿編です!!


本番まで練習はあと6回!!

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※用語解説※

メルヒオール
 第1回の日記にも登場したこの楽器の詳細は国立ホルニステンのホームページにありますので、是非訪問してみましょう(このページでは伏せてある前の持ち主も何と実名で登場)。

パイパーズ
 「管楽器とヒトの雑誌」と銘打った月刊誌。マニアにはたまらない情報が満載されているため、その筋では非常に有名。定期購読期間を1年にしているか2年にしているかによって、その人のマニア度を測ることができる。

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