アヒルの子から白鳥に?〜ヴィオラの魅力〜 (1)



 HP管理人より与えられた課題は、「ヴィオラという楽器について、オケでの役割、楽器の特徴、有名な曲での聞き所などをわかりやすく楽しく紹介してね」というものでした。色々な曲を取り上げて、「へーこんなこともしてるんだとか、あの曲のあの部分ビオラだったんだとか」ということを書いてほしい、とのことなのですが、これはなかなか難しいテーマでした。

 そもそも、世の中に陽のあたる楽器と、陽のあたらない楽器の2種類があるとすれば、ヴィオラは間違いなく後者に入るんじゃないでしょうかね。この企画、第1回目からヴィオラなんて、ちょっと渋すぎるんじゃないの??、、などとぼやきつつ、書き始めることにしました。


「ヴィオラは弦楽器のふるさとだ!」

 そもそも "viola" という語には、まさしくオケの弦楽器の真ん中の楽器というヴィオラという意味のほかに、リュート,ヴァイオリンなどのヨーロッパの擦弦楽器の総称という意味もあるそうです。15世紀後半にヴァイオリンが弦楽器の決定打として衝撃のデビューを飾るまで、ヴィオラ・ダ・ガンバ,ヴィオラ・ダ・ブラッチオ,ヴィオラ・ダモーレなど、様々な「ヴィオラ・なんたら」という楽器が作られていました。現在ある形のヴィオラというものは、ヴァイオリンの影響下に16世紀ごろにイタリアのクレモナ派によって完成されたようです。


「『渋い』って誉め言葉?」

 ヴィオラの弦は4本あって、調弦は低い方からC,G,D,Aの5度間隔になっています。これはヴァイオリンの調弦(G,D,A,E)と比べると、音の高い方の弦が1本ない替わりに、低い方に1本多いという具合になっています。またチェロと比べると、ちょうど1オクターブ上になっています。このようにヴィオラは、大きなヴァイオリンとも小さなチェロともいうべき性格を持っており、音域的にも構造的にも橋渡しの楽器と言えます。

 ヴィオラの音色は、ヴァイオリンやチェロのような豊かな響きや輝くような音色はあまりなく、どちらかというと渋くて鼻にかかったような音色が出ます。これは、ヴァイオリンの5度下という音域に見合うような楽器の体積を計算すると、物理的には現在のヴィオラよりもはるかに大きな胴体が必要になるのですが、そうすると肩に載っけて弾くことが出来なくなるので、楽器の大きさを切り詰めて設計していることによります。しかし、このことで逆にヴィオラ独特の音色が生まれ、弦の響きに厚みと多様性を持たせているとも言えます。


「ヴィオラの下積み人生」

 さて、ヴィオラの役割と言えば、音域的にも中音域ということで、合奏の中では第2ヴァイオリンと同様に「内声」部、つまり旋律を弾くというよりは、伴奏の和音を、ひたすら8部音符や16分音符の連続として弾くというのがヴィオラの普段の生活ということになります。 

 合奏音楽がまだ初期の段階では、ヴィオラパートなどはパート譜自体がなく、第2バイオリンの譜面を一緒に弾くだけとかいう虐げられた時期もあり、まさしく弦楽器の「おしん」というべき下積み生活時代がありました。それが、バッハ、ハイドン、モーツァルトなど、合奏の技法が発展してくるに従って、ヴィオラにも高度な役割が与えられるようになっていきました。ベートーヴェンやロマン派以後の作曲家の作品では、次第に内声部にも大きな役割が要求されるようになり、ヴィオラパートも、弦楽器の書法が全体的に拡張されていくなかで、その個性をより発揮できるような使われ方をされるようになりました。近現代の大規模で精緻なオーケストレーションでは、もう何でもあり状態ですね。


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