はやくも真打ち登場?トランペット編(2)






トランペットやっててほんとに良かった

    ところが、水星交響楽団に所属している我々には、オケのトランペットってつまんないんじゃない?、などと言う指摘を受けることなどまずありません。「水響の成り立ちこれまで」を見ていただければわかるとおり、このオケはこれでもかこれでもかとTp吹きの人格を破綻させるような曲をやりつづけています。今回のマラ7、パリのアメリカ人もそうですが、水響の得意とする(得意かどうかは良くわからないけど飽きずに演奏しつづける)レパートリーとは、マーラーをはじめとする後期ロマン派の曲、ラベルを中心としたフランス物、そしてバーンスタインに代表されるアメリカものですが、これらの曲こそ、現代Tpの能力をふんだんに発揮し麻薬的な魅力で奏者を多重人格者にしてしまう曲の最たるものなのです。少し酷使が過ぎるんじゃないの? と思うことも時にはありますが、いやぁラッパやっててよかった、たまたまでも水響にいられて幸運だ、と思う今日この頃です。


トランペットのここを聴いて!!

ここからはまるで私の好みであり、必ずしも一般的な常識とはかけ離れていることもあるとはじめに断りを入れておきまして、私の好きな3人の作曲家の作品の中から、ここを聴いて!!という部分をご紹介いたしましょう。

1.マーラー

 マーラーの作品での特徴的なTpの使われ方は、どの作品にも必ずと言って良いほど現れ舞台裏でもしばしば奏される信号ラッパの音列と、そのいずれもが神々しい場面であられるピアノのソロおよびコラールでしょう。第3番の終楽章のコラールは、それまでの数十分はこのコラールのためだけにあったのかと思うほど美しいし、第9番の3楽章のソロもつかの間の救いの瞬間もまたしかりです。

 なかでも、この両者が非常に良く現れる曲は、交響曲第2番「復活」でしょう。「復活」では4楽章であまりに神々しいコラールが、5楽章では舞台裏から4本のTpによるファンファーレがありますが、その美しさはとてもでありませんが、ここで書き表すことなどできません。(かといって、じゃぁおまえは演奏だったら表現できるのかと言われると、大変困ってしまいますけれども……)

 マーラーは、好きな人はとことん好きですが、敬遠する人は徹底して敬遠しがちになりがちです。ですが、後者の人も、「復活」は聴いてみることをお勧めします。水響で近い将来また演奏するのではないかと言ううわさもありますことですしね。それでも、マーラーはどうもなぁという人は、第5番の冒頭だけ聞いて下さい。


2.リヒャルト・シュトラウス

 その曲調の割に水響では取り上げられることがほとんどなかったのですが、昨年オペラシティホールに感動の嵐を起こしたアルプス交響曲の成功をきっかけに、今後頻繁に当団でも取り上げることになる思われる作曲家であるリヒャルト・シュトラウスのTpの使い方は、全ての出番にオケの中での圧倒的な存在感が要求されること(ただ、音がでかいことが要求されていうことではありません。念のため)、また奏者に対する嫌がらせとしか思えない超絶技巧が要求されること(しかも、聴衆にはあまりそういう風には聞こえない)、また以上のことから奏者の技量、音楽性がはっきり演奏に現れることに特徴があると言えましょう。そんな彼の曲の中で、アルプス交響曲はもちろんこと、その他で特に皆様に聞いていただきたい曲は、家庭交響曲、ツァラツストラはかく語りき、町人貴族、英雄の生涯……。うーん、ほとんど全部ですね。それでは、これらの曲の聴き所だけ箇条書きであげておきましょう。


 家庭交響曲  …冒頭からまもなくに現れる2小節のTpのフレーズは、跳躍の苦手なTp奏者を苦しめます。そして、それは全曲を通じて、くり返しくり返し現れます。

 ツァラツストラ…その冒頭があまりに有名です。Tp奏者は曲中常にハ調のアルペジオを吹いています。しかし、使う音がナチュラルTpと同じ分散和音しか使わないのに、彼の手にかかると、どうしてかくもTpを際だたすことができるのでしょうか? また、この曲にもオクターブの跳躍で鶏の鬨の声をあげるところがありますが、これもTp泣かせのフレーズです。

 組曲町人貴族 …小編成の曲で他の楽器とともにソロ大会のような曲です。中でも「クレオントの入場」のオブリガードは大変おいしいところです。

 英雄の生涯  …Tpが活躍するのは40分あまりの曲の中でたったの8分程度ですが、その「英雄の戦場」では5本のTpがまさしく好きなだけ大暴れして勝利を謳歌します。


3.ストラビンスキー

リヒャルト・シュトラウスと並び個々の楽器の能力を最大限に発揮する作曲家であるストラビンスキーの曲には、ピッコロTpがしばしば重要な場面に登場いたします。彼の曲では、すでに水響のサントリー公演で演奏された春の祭典と、近い将来に必ずやみなさまにお聞かせすることになるであろうペトリューシカの2曲です。春の祭典はその強烈なリズム・和音から現代音楽の古典と呼ぶのにふさわしい曲で、ピッコロTpはそうした曲想に強烈なアクセントを与えています。ペトリューシカにはその3楽章で、コルネット(Tpの親戚のような楽器)のソロがありますし、曲の最後はピッコロTpの2重奏が複調(同時に2つの調が併存する〉が少し不思議にうつろな響きを残してしめくくられます。この曲のコルネットのソロの難易度はまた高く、Tp吹きの必須レパートリーとして位置づけられています。



トップページへ 次のページへ