はやくも真打ち登場?トランペット編(3)






ハーセスについて

  この段は前段にもましてまるっきり私の好みであり、絶対に一般的な常識とはかけ離れているとはじめに断りを入れておきまして、古今東西で最高のオケのTp奏者を紹介いたしましょう。シカゴ交響楽団のアドルフ・ハーセスです。1921年生まれで、1948年にシカゴ響の首席に就任し、50年以上経ってもう80にもなろうかというのにまだ首席でいるという驚異の経歴もさる事ながら、彼のすごいところは、彼の演奏がどんな場面であっても圧倒的な存在感を感じさせるところです。何しろ音がでかい。

何しろうまい。ピアノのときにもちょっと目立ち過ぎじゃないかなぁと思わせるのも音色がすばらしいのを考え合わせれば、ご愛嬌。シカゴの演奏に、ブラームスを初めとするTpが脇に回りがちな曲にほとんどといっていいほど名演と呼ばれる演奏がない一方で、Tpの存在感の大きさが曲の出来に比例するような曲では、圧倒的な名演が多いのも、ひとえに彼に拠るところと断言してもよいでしょう。前段の3人の作曲家の曲を吹くにもっともふさわしいプレーヤーです。

もし、あなたがすばらしいTpを聴いたことがないと言うならば、そんな彼のお勧めの演奏をいくつか挙げますので、どれか1枚でも他のオケのそれと聴き比べてみて下さい。そこには、たまたま職業としてTpを吹いている人物と、必然的に天職としてTp吹いている人物との違いを聞き取ることができることでしょう。(ちなみにこの演奏はあくまでTpを基準に選んでいますので、オケ全体の演奏とみたときに名演であるとは限りません)

演奏はすべてシカゴ交響楽団

フリッツ・ライナー指揮
  リヒャルトシュトラウス「英雄の生涯」「ツァラツストラはかく語りき」「家庭交響曲」「組曲『町人貴族』」、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」、マーラー「大地の歌」

ショルティ指揮
マーラー「第5番」「第8番」、ストラビンスキー「春の祭典」「ペトリューシカ」

アバド指揮
マーラー「第7番」

ブーレーズ指揮
マーラー「第9番」

などなど。


さいごに

  だらだらと長きにわたり書き綴ってまいりましたが、水響の演奏会に一度でも足を運んでいただいた方には、ステージの王様などという企画をわざわざ立てるまでもなく、Tpの魅力はご承知だと思われるはずでしょう。もし、水響には行ったことはあるけどTpの魅力なんてよくわかんなかったぞ、という人がおりましたら、その責はひとえに、うっ、これはひょっとして墓穴か?

(by 6年前はまだその自覚のなかった多重人格者〉


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