マラ7攻略日記(水響 ホルン編) 第3回 (1999/5/23)

ベルアップ!!

5/23(日)  4回目の練習日

 一昨日(5/21)は、『ブランディス弦楽四重奏団とベルリンの3人のソリストたち』という演奏会に行き、ザイフェルトが演奏するモーツァルトのホルン五重奏を聴いてきた。今年で68歳となり指回りなどが衰えたとはいえ、ホルンをまるで手足のように自然に鳴らす技術においては、まだまだ他のプレイヤーの追随を許さない。あのイメージで自然に吹ければ全くバテずに最後まで行けるはず。

●アンブシュアに注意
 それにしても今日(5/23)はとても天気が良い。前プロのパリアメは降りばんなので、私は外で娘とひなたぼっこすることとなった。本来ならば、一昨日のイメージを再現すべく音出しでもして、アンブシュアの再チェックをするべきところであるが、そこは娘が許してくれない。マウスピースで「だんご3兄弟」「あいう」など「おかあさんといっしょ」のヒットメドレーを30分近く吹かされてしまう。かなりハードな練習であるにもかかわらず、アンブシュア調整には全く役に立ちそうにない。

●楽器は日陰に
 天気が良い日に、楽器を日当たりの良いところに放置するのは禁物である。
 まだ5月だし大丈夫かなと思っていたが、音出し前にケースを空けると生温かい楽器が出現。楽器が冷めるまでチューニングは合いそうにない。
 最も心配なのはグリスが溶け出してないかどうかである。高校の時になるが、クーラーのない暑い部室で練習しているときに、思いきり吹いたら4番の抜差管がはずれたこともある。グリスが溶けてしまうと、楽器が冷めてもチューニングが不安定になるほか、溶けたグリスがロータリーに入り込んでロータリーの動きが鈍くなり、洗浄が必要となる。今日は大丈夫みたいだが、以後気をつけよう。


 今日の練習は、第1楽章をみっちり2時間というハードなものだった。

【第1楽章】

 マラ7で4番ホルンを吹いているK君が、練習前に「第1楽章は跳躍が大変ですね」などと不気味な発言。第1楽章の練習は今日がはじめての私は、第3楽章がトリッキーで大変だと思っていたので、とりあえず「第3楽章の方が大変だよ」と言ってみた。第1楽章のページ数が多いので、私にとっては跳躍よりもスタミナの方が心配であった。

●まずはパート譜をそろえよう
 第1楽章の最大の難関は、1stホルンの1ページ目の楽譜がないことである(N口君よろしく)。今日はスコアを見ながら吹いたのだが、とても追いつかない。やはりパート譜は全部そろってないとダメなようだ(あたりまえだが)。

●跳躍は確かに多い
 練習がはじまると、なるほど跳躍が多くて大変である。昔吹奏楽をやっていたころは、こんな感じのパッセージが出てきてもあまりはずさなかったのに、オケでやるとはずす比率が高くなるのは不思議である。

●リズムセンスは「チェコ・フィル」のCDで
 この楽章はリズムをとるのが難しい。付点8分と2つの32分音符がくっついたリズムは、そのままやると案の定「もうちょっとつめて」との指揮者からの注文。しかし、ただつめるだけだとノリの悪い『軽騎兵』のようになってしまう。粋な感じにつめることができるかどうかは、個人のセンスにかかっていると思われる。
 普段からリズムセンスを養うには、ノイマン指揮チェコ・フィルのCDがお勧めである。しょっぱなのテナーホルンのノリに大いに驚嘆し、そのあと出てくるケイマル御大のトランペットによる旋律に強烈なカウンターパンチをくらわされること請け合いである。こんな演奏が許されるのはチェコ・フィルだからこそとも言えるが、まずは温故知新の意味を込めて、先人の演奏に耳を傾けるのもいい刺激になると思う。ノリはピカイチ。マラ7はチェコの曲ではないかと思うほどである。

●冷静に大きな音で
 第1楽章だけだと吹ききることはできるものの、マラ7は第5楽章まで全体的に大変であり、最後までスタミナが持つかは大いに心配である。しかしながら、音量記号はfとかffが多く、これに振りまわされると大変なことになりそうである。冷静に大きな音で演奏するように心掛けたい。


練習後の感想

●ベルアップはカッコ良くやろう!
 第1楽章の最後は、ホルンのベルアップが主役だ。ホルンのベルアップは他の楽器のベルアップと比べても何倍ものインパクトがあると思う。
 私が今まで感銘を受けたベルアップは2つある。1つはN響が随分前にストラヴィンスキーの『春の祭典』をやったときの千葉馨のベルアップ、もう1つは、同じく『春の祭典』をベルリン・フィルがハイティンク指揮でやったときのザイフェルトのベルアップである。
 アマオケでベルアップをやると、ベルがきちんと上がらずカッコ悪い人が必ず何人かいる。アマチュアホルン吹きにありがちなベルアップの傾向は次の通りである。

 (1)楽器が地面と平行(つまりベルは上がっていない)
 (2)なぜか上体が後ろに反り返る(それじゃ音は下に行っちゃいますよ)
 (3)ベルアップしてようやく通常の構えに(もともとベルが下がり気味) など

 ベルアップで重要なことは、「見た目と実際の音のインパクトのシナジー」である。見た目でまず聴衆を驚かせ、出る音で唸らせるというステップが不可欠である。上記(1)〜(3)のようなベルアップならば、見た目ですでに負けているのでやらないほうがマシである。
 また、(1)〜(3)のようなベルアップをすると、総じて音程も不安定になってしまいがちであるので、マイナスのシナジーを生んでしまう。


今日のワンポイントレッスン

※これぞ正統派ベルアップ

 私の考えるホルンの正統派ベルアップは、次の方法で行われる。

 (1)角度…地面に対し約20度
 (2)左手…脇は締め気味、小指側が若干下がった感じ
 (3)あご…上がらないように注意


 さあ、楽器を取り出して試してみよう。この3点に気をつければ、マウスピースと唇の接点は通常の構えの時と変わらないはずである。したがって、通常の吹き方と同じようにコントロールすることが可能である。マラ9で出てくるようなベルアップでのゲシュトップも難なくできる。もしこの吹き方でも音程が悪くなるとしたら、それはもともと音程が悪いのだ。


※跳躍はまさに基本

 跳躍が多いとはずれる金管楽器奏者は、残念ながら基本ができていないところに問題があると言わざるを得ない。そういう自分も結構最近はずれるようになってきているので、まずは自分自身の問題点を振り返る意味を込めて、音はずれる原因と練習方法をおさらいしてみよう。

◆音はどうやって出す?
 そもそも金管楽器奏者はどうやって音をあてているのか。
 関係するところは、(1)アンブシュア(2)アパチア(3)息のスピード(4)シラブル、といったところと考えられる。様々な教則本に様々なことが書いてあり、それぞれ参考になるが、個人的にはこれら4つの組み合わせが音を出し音程を作り上げる要素だと考えている。さらに重要なのが(5)これら4つをコントロールする力、である。

◆なぜ音がはずれる?
 バテてしまって音がはずれるというのは、アンブシュアが崩れること、集中力が落ちることが原因であり、ある程度仕方ない部分である。社会人となるとなかなか難しいが、改善のためには日頃の吹き込みが重要である。
 一方、バテてもないのに音がはずれるのは深刻である。「なぜ」と問われれば、「技術的には上記5つのバランスが上手く取れていないから」と答えるしかない。上記5つのうち自分はどの点がどのように問題なのかを正しく把握し、解決策を考え、それを実行できないと音がはずれるという状況はなくならない。
 技術的にはこの通りで、下にさらい方の参考意見を書いておくが、何か重要なことが抜けていると気づいたあなたはエライ!!実は最も重要なのは歌である。「歌」をはっきりイメージできていなければ、上記(5)のコントロールもあいまいになり、結果として音は当然のようにはずれてしまう。また「どのように歌いたいか」があいまいだと、「何の技術が足りないか」という問題点が明らかにならず、日々の練習の目標設定は中途半端に終わるため、上手くなるわけがない。楽器をやるのに「歌」は基本だというのを、改めて認識するようにしよう。

◆跳躍のさらい方は?
 技術的な面を磨くには、ひたすらさらうことが重要である。跳躍にはいくつかさらい方があるが、水響の金管奏者でよく見かけるのは、3連符で「Bb-F-Bb」とはじめる方法と、「Bb-F-F-Bb、Bb-F-Bb-Bb-F-Bb...」とやる方法の2つのタイプである。これらの基本的な練習だけでは実際の曲を演奏するには不十分なので、曲になっているエチュード(本当の曲でもいい)を別途やる必要があると思われる。コーポラッシュあるいはオーケストラ・スタディなどでつまみ食いするのが無難な方法であろう。
 さらに、これらをいろいろな速さ、いろいろな音量でやることが大切である。ppでもffでも同じようにできなければ、上記(1)〜(5)のどこかに問題点があるので、いろいろ試しながら自分自身の弱点を発見することで道は開ける。

できないと、あきらめるまえに、まずさらおう!!!


本番まで練習はあと11回!!

この日記の作者へのご意見、ご感想をお寄せ下さい。


※用語解説※

ザイフェルト
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の元主席ホルン奏者「ゲルト・ザイフェルト」のこと。ベルリン・フィル退団後も室内楽でちょくちょく来日している。

『軽騎兵』
 皆さんご存知、スッペ(ズッペ)の『軽騎兵序曲』のこと。ホルンがたまらなくきついわりには、最初のファンファーレ以外全く報われないことでも有名。吹奏楽版はオケ版より半音高いため一層きつい。

日記一覧へ     前の日記へ     次の日記へ

トップページへ