アヒルの子から白鳥に?〜ヴィオラの魅力〜 (3)




「最後に〜ヴィオラの魅力について」

 昔、ある管楽器奏者の先輩から「ヴィオラって、よっぽど音楽が好きじゃないとやれないよなー」と言われたのをいまだに覚えています。確かにヴィオラという楽器は目立つ出番が多いわけでもないし、音色と言う点でも、本当のところヴァイオリンやチェロのように、ダイレクトに人を惹きつける魅力がある楽器と比べると、今一つ魅力が伝わりにくいかなという気もします。

 そんな訳で、昔は私も伴奏ばかりじゃつまらない、もっと目立つ楽器がやりたいな、と思っていた時期もありました。しかし、長く付き合っていると相手と似てくるというのは、人間の場合も楽器の場合も同じなのかもしれませんが、ヴィオラも長くやってると、メロディを弾くとか、目立つとか、そういうことだけに音楽の魅力があるではないと感じるようになるから不思議です。実際、目立たない出番ならたくさんあるし?、「きざみ」とか「あとうち」とか、弦楽器内声の独占業務のような技法がありますが、やってみるとなかなか楽しいものです。

 それにしても、ヴィオラの音色については、地味ながら本当に良い音色がします。いまだかつてヴィオラの音色についてあまり感銘を受けたことがない、という方は是非1度、協奏曲やソナタなどの演奏会に行って、プロのナマのヴィオラの音をじっくり聴いてみて下さい。例えば、今井信子さんという世界的なヴィオリストは、ナマの演奏会で初めてR.シュトラウスの「ドン・キホーテ」を聴いて、ヴィオラの魅力に目覚め、ヴァイオリンからヴィオラに転向したそうです。実際CDなどの録音では、会場全体を包み込むような、ヴィオラの柔らかい音色の微妙なニュアンスは伝えきれないように思えます。

 さて、今回、オケの曲のヴィオラが目立つ部分を取り上げてみましたが、普段、例えば演奏会に行って知らない曲を聴いたりするときに、取りたててヴィオラの音に注意して聴くわけでもないのですが、音楽の流れに身を任せているとき、弦楽器の響きのなかに、ふとヴィオラの音色が聞えてくる瞬間があります。それは、特別ヴィオラの見せ場という訳でもなく、例えば和音の真ん中辺りの音がふと動いたとか、そんなさりげない部分かもしれません。どの曲のどの部分を聴いていても、今そこで響いている響きの美しさ、その中の隠し味のようにその響きを支えている存在、そういう部分がヴィオラの魅力と言えましょう。

(文責:ヴィオラ Y)


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